年末から焦点が定まってきた消費税の増税について、マスコミの視点だけでは足りない気がするので、少し自分なりにまとめてみます。
まず
第一に財政の視点からは、いずれ増税するのは仕方がないことだと思います。高齢化に伴う負担・消費構造・雇用者減による税源構造の変化がその主な理由です。他にも所得捕捉率の補完や租税回避行動の防止などの観点もありますが、これらは技術的な問題で本質ではありません。
第二に、日本経済の視点からは今は増税をするべきではないことはわざわざ理由を述べなくても多くの方が納得していただけるはずです。
第三に、まれにテレビを視ているといわれることが、『輸出戻し税』といわれている問題です。これは大きく本質を外しているので皆さんも騙されないようにして貰いたい問題です。消費税(日本のは正確には付加価値税)には「国境税調整」という原則があって、消費地で課税権を確保するために国境で調整するものです。たしかにトヨタなどの輸出企業では還付される事実があります。
ここまではよく報道されている問題です。
まず、みなさんもテレビだけ視ていると騙されがちなのが第三の問題です。
日本の消費税等5%が0%課税になり結果として消費税が還付されるケースがでますが、そのかわりアメリカで5%以上の州税や欧州で20%近くの消費税を負担します。(あれ?国内企業は消費税の差額分生産コストが安くなるから有利になっちゃう。大手に消費税還付されても20%は払いたくないよね。)
そして報道姿勢で問題があるのは、
その還付金は下請け企業が払ったものを大手企業が横取りしているような印象を与えることです。
本来ならば、その消費税等5%は下請け企業は受け取っています。ピンはねされたりしていません。
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でも下請け企業は消費税の支払いで四苦八苦です。何故でしょう?
問題の本質は、税法を超えたところで取引慣行にあるのではないでしょうか?
例えば正当な利潤が50%の加工品を生産していて、100+5で仕入れた材料を加工して200+10で売却すれば正当な利潤100と消費税等の差引5が手に入り、払うべき消費税等5は払えます。
しかし、実際は力関係で100+5で仕入れたものを加工して190+10(=200+0)で売却したらどうでしょう?税抜きでは利潤が90で支払うべき消費税等が5です。利潤が90の時に会社利益が+5だった場合には消費税等を払ったら何も無くなります。利潤が90の時に会社利益が0だったら払えますか?
この問題は
取引慣行と生産性の問題になります。なぜ生産性の問題かというと、190+10で売った時に利潤が100あれば良いんです。利潤が50%を超えるので生産性が上がれば問題になりません。
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さて、いま政府は長期的な財政の問題を掲げて消費税の増税をして良いのでしょうか?
これまた良く報道されている財政支出の問題に手を付けずに増税するという問題よりも、タチの悪い取引慣行と生産性という問題を放置していて増税するという方が悪いと私は思います。
つまり、取引慣行の問題であれば下請けとの取引を適正化するように法整備をするか監査機構を作り強い権限を与えるべきです。適正化の観点として労働分配が正常にできるかどうかを重要視して欲しいと思っています。さらにこの場合労働分配率ではなく一人あたり報酬額を監視すべきではないかと考えています。
もし、生産性の問題であるならばその原因を取り除く努力をするべきです。為替問題に本気になるとか、高速道路を貨物に限り無料化するとか、インフラ整備については補助金でばらまくにしても、規制を緩和する代わりに品質保持のために監査機構をつくり違反した場合は罰金を取るなど支出を抑える方法にしてもどちらかに手を付けるとかやりようはいくらでもあるような気がします(すいません専門家ではないので思い付きです。)。
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この二つの問題に道筋を明らかにして取り組まないで消費税増税をすれば、単なる下請けいじめ、ひいては国内産業の衰退を招くと私は考えています。
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余談ですが、このように取引監視をするにしても生産向上政策をするにしても賃金総額が増えるようにして、法人税制で労務費に優遇税制をとれば企業も賃金を多く払うインセンティブが生まれ、所得増加で所得税増収、所得増加効果により消費税増収が見込めるのでは?という夢物語を考えています。
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今は増税問題が政局になり、その背景には個別の団体による影響力を感じます。このような影響力が全体にとってうまくいく場合もありますが、うまくいかない場合もあります。これは経済学ではレントシーキング問題といった気がします。
さらにこの問題が過去に日本でうまくいった例の説明を、2007年に政府税制調査会会長になられた香西泰さんが「ビックゲーム」というキーワードでされていたと記憶しています。
レントシーキングは良くないぞーという意見は、トヨタは消費税払うどころか受け取ってんだぞーという叫ぶ方々にも受け入れられると思うので、この記事の中断でムッときた方は調べてみるのも一考かと。